九州大学 大学院システム情報科学府/共創学部 岡田研究室

本研究室は, ユビキタス・マルチモーダルセンシング技術を基軸として,人の身体・環境・知能に関わる情報に関して,網羅的に計測して計算リソースとして取り込むことで,行動・知識に対する工学的計測と科学的理解を行うデータサイエンス技術を開発・実践することを目指しています.具体的には, データサイエンスの基軸となる次世代の計測環境の開発や, 実学的な価値を持つ応用領域の開拓, 加えて,実世界への具体的インパクトとそれに基づく基盤技術の構成的な改善技術の開発など,を行うものです.

本研究室は,大学院システム情報科学府(工学系),共創学部(学融合系)に開かれており,学際研究の推進に適した研究環境と考えます.本研究室に参加されたい大学院生/学部生を,広く募集しております.基礎研究から応用研究まで,広くテーマ設定が可能です.ご興味のある方は,教員の連絡先まで,お気軽にご連絡下さい.

(主催教員:九州大学 共創学部/大学院システム情報科学府 准教授 岡田 昌也)


研究の概要

人は,実世界の中で様々な活動を行うもので,特に,学習など知的な営みは,人を人たらしめているものだと思います.本研究室では,(1)「人が実世界で行う知的活動に関して,その成り立ち」を理解したい,(2)また,そのような理解に基づき「人が知的に振る舞える仕組み」を具現化したい,と考えています.

これに迫るための着眼点は,「人が,実世界と直接,相互作用できる身体をもつこと(身体性)」,「人が自らの感覚器を通して,周りの実世界情報を得られること(立脚性)」です[Pfeifer2001,岡田2012].言い換えれば,「人の身体は,実世界の情報を取得するためのセンサとして,また,実世界を操作するためのアクチュエータとして,機能する」[Okada2012]という点が,ポイントです.

本研究では,実世界での知的活動のうち,実世界学習(特に,自然環境の中での環境学習)を取り上げています.実世界学習は,「学習者の身体を通した活動であり,学習者が実世界に対してなす相互作用が,学習という知識活動を駆動する」[岡田2012]ものです.これまでの研究で,このような学習の成り立ちにおいて,情報処理,身体(行動),実世界(環境)が一定の関係性を有することが分かってきました[岡田2008,岡田2012].例えば,実世界における身体運動をウェアラブルセンサで計測し,処理することで,実世界学習における知識交換など,知的活動の生起は推定できます[岡田2008].また,「実世界学習の場がもつ空間特性」を抽出する手法も開発しました[岡田2012].このような研究を発展させて,最近は,知識,行動,環境という異質な要素をユビキタスセンシング技術で捉え,階層的に理解を積み重ねる手法を提案しています[Okada2014].これは,人の高次の知的状況を捉え,また,その捉えた状況をもとにして,知的活動を拡張するための情報処理フレームワークです[Okada2014].

さて,このような研究は難しく,また,基礎となる知見も不足しているため,頭の中だけでモデルを作るには限界があります.そこで,知的活動の「実態」を知り,それをシステムに取り込むことが基礎的に必要となります.そこで,本研究の実施においては,(1)「マルチモーダル(多様式)なデータ分析によって,実世界で生起する現象を多面的に把握すること」,(2)「実世界指向の技術をもとにしたシステム開発によって,新しいもの(分析技術および支援技術)を創り出すこと」,の2つの視点を重視しています.この2つの視点は独立したものではなく,互いに補い合うものであり,知見が技術開発を生み,技術開発が知見を生むという関係です.すなわち,本研究室では,データ解析(データドリブンの研究)で得られたデザインプリンシプルを,情報システムのモデル化・設計・実装(モデルドリブンの研究)にフィードバックし,また,逆も行うという循環的な研究方法論で,研究を実施しています. その際,下記のキーワードに挙げたとおり,工学技術だけでなく,認知心理学や学習科学,また,社会調査法なども含めた学際的な側面から,研究の実施を行っています.



[Pfeifer2001] Pfeifer, R. and Scheier, C.: Understanding Intelligence, The MIT Press, Cambridge, MA (2001).
[岡田2008] 岡田 昌也,鳥山 朋二,多田 昌裕,角 康之,間瀬 健二,小暮 潔,萩田 紀博:``実世界重要体験の抽出・再現に基づく事後学習支援手法の提案'',電子情報通信学会論文誌D,Vol. J91-D, No.1, pp. 65--77,1月,2008. (査読あり) [岡田2012] 岡田 昌也,多田 昌裕:``行動計測・知識外化技術による実世界学習の場の空間特性の抽出手法'',情報処理学会論文誌,Vol. 53, No. 4, pp. 1433--1447, 4月,2012. (査読あり)
[Okada2012] Masaya Okada, and Masahiro Tada: ``Sensing Learner Access to the Knowledge Spatially Embedded in the World'', Proceedings of the Second International Conference on Mobile Services, Resources, and Users (MOBILITY 2012), pp. 27--33, Venice, Italy, October, 2012. (査読あり)
[Okada2014] Masaya Okada, and Masahiro Tada: ``Formative Assessment Method of Real-world Learning by Integrating Heterogeneous Elements of Behavior, Knowledge, and the Environment'', Proceedings of The 4th International Conference on Learning Analytics and Knowledge (LAK14), pp. 1--10, ACM, Indiana, USA, March 2014(査読あり)


分野(科研費の分類コード)


研究のキーワード


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